第9回:ネットワークに接続するには2段階ある【物理的な接続・論理的な接続・グローバルアドレス・プライベートアドレス・パブリックアドレス・DHCP・NAT・NAPT】

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この記事のポイント

  • ネットワークに接続するには2つの段階がある
  • 物理的な接続
  • 論理的な接続
  • 物理的な接続とは、LANケーブルを挿すなど物理的な信号をやりとりできるようにすること
  • 論理的な接続とは、インタフェースにIPアドレスを設定すること

ネットワークに接続するには2段階ある

IPアドレスの設定

物理的な接続と論理的な接続

ネットワークに接続するということについて、詳しく考えておきましょう。ネットワークに接続するときには、「1. 物理的な接続」と「2.論理的な接続」という2つの段階があります。

TCP/IPの階層でいうと、物理的な接続はネットワークインタフェース層で、論理的な接続はインターネット層です。

物理的な接続とは、物理的な信号をやりとりできるようにすることです。具体的には、イーサネットのインタフェースにLANケーブルを挿したり、無線LANのアクセスポイントへ接続したり、携帯電話基地局の電波を捕捉するなどです。

そして、物理的な接続ができているうえで、論理的な接続としてIPアドレスの設定も必要になります。現在は、TCP/IPをネットワークの共通言語として使っていて、TCP/IPではIPアドレスを指定して通信を行います。そのため、IPアドレスがなければ通信できません。例えば、ホストにIPアドレス192.168.1.1/24を設定することで、そのホストは192.168.1.0/24のネットワークに接続して、TCP/IPを使った通信ができるようになります。

ネットワークに接続するということ

ネットワークに接続するということ

このようなIPアドレスの設定は、IT技術にあまり詳しくないユーザにとっては敷居が高いことがあります。そこで、DHCPなどによって自動設定を行いーユーザにIPアドレスの設定を意識させないようにしていることが多くなっています。つまり、LANケーブルを挿して、物理的な接続が完了したら、自動的に論理的な接続も完了できるようにしています。普段は意識していなくても、IPアドレスの設定まで行って初めて「ネットワークに接続」したことになるということはぜひ知っておいてください。

インターネットで使うアドレスとプライベートネットワークで使うアドレス


次の項目のポイント

  • グローバルアドレスはインターネットで利用するアドレス
  • プライベートアドレスはプライベートネットワークで利用するアドレ
  • プライベートアドレスの範囲
  • 10.0.0.0~10.255.255.255
  • 172.16.0.0~172.31.255.255
  • 192.168.0.0~192.168.255.255

グローバルアドレス、プライベートアドレス

IPアドレスの利用範囲

IPアドレスは利用範囲によって、グローバルアドレス(パブリックアドレス)プライベートアドレスの2つに分類されます。

グローバルアドレスは、インターネットで利用するIPアドレスです。インターネットでの通信を行うためには、必ずグローバルアドレスが必要です。グローバルアドレスは、インターネット全体で重複しないように管理されています。そのため、グローバルアドレスは好き勝手に利用できるわけではなく、インターネットに接続するためにインターネット接続サービスを契約すると、グローバルアドレスが割り当てられるようになります(※6)。グローバルアドレスはパブリックアドレスとも呼ばれます。

そして、社内ネットワークなどのプライベートネットワークで利用するIPアドレスがプライベートアドレスです。プライベートアドレスの範囲は次の通りです。

  • 10.0.0.0~10.255.255.255
  • 172.16.0.0~172.31.255.255
  • 192.168.0.0~192.168.255.255

この範囲のアドレスはプライベートネットワークの中であれば、自由に利用できます。プライベートアドレスの重複が起こってしまっていてもプライベートネットワークの中の通信にはまったく問題ありません

グローバルアドレスとプライベートアドレス

グローバルアドレスとプライベートアドレス

(※6)インターネット接続サービスによっては、グローバルアドレスが割り当てられないこともあります。

プライベートネットワークからインターネットへの通信

プライベートアドレスを利用するプライベートネットワークからインターネットへ通信するときには、そのままでは通信できなくなってしまいます。

プライベートネットワークからインターネットへの通信

プライベートネットワークからインターネットへの通信

プライベートネットワークからインターネットへの通信を行うには、次項で解説するNAT(Network Address Translation)が必要です。

プライベートネットワークからインターネットへの通信


次の項目のポイント

  • インターネットでは宛先がプライペートアドレスのIPパケットは破棄される
  • NATによってプライベートアドレスとグローバルアドレスを変換して、プライベートネットワークからインターネットへの通信ができるようにする

NATとは

プライペートアドレスのままではリプライが返ってこない

プライベートネットワークからインターネットへの通信はそのままではできません。プライベートネットワークのPCからインターネットのサーバヘリクエストを送信すると、宛先はグローバルアドレスで送信元はプライベートアドレスです。サーバへのリクエストは、問題なく転送できます。

しかし、リプライは返ってきません。サーバからリプライを返します。そのときの宛先はプライベートアドレスで送信元はグローバルアドレスです。インターネットでは、宛先がプライベートアドレスとなっているIPパケットは必ず破棄されてしまうからです。

宛先がプライベートアドレスのリプライが破棄される

宛先がプライベートアドレスのリプライが破棄される

アドレスを変換する

プライベートネットワークからインターネットへの通信するためには次のようにNATによるアドレス変換を行います。

NATによるアドレス変換の仕組み

NATによるアドレス変換の仕組み

  1. プライベートネットワークからインターネット宛てのリクエストを転送する際に、送信元IPアドレスを変換します。
  2. ルータは、あとでもとに戻すために変換したアドレスの対応をNATテーブルに保持しておきます。
  3. リクエストに対するリプライがルータに戻ってくると、宛先IPアドレスを変換します。そのとき、NATテーブルに保持しておいたアドレスの対応を利用します。

プライベートアドレスとグローバルアドレスを1対1に対応づけると、グローバルアドレスがたくさん必要になってしまいます。複数のプライベートアドレスを1つのグローバルアドレスに対応づけるアドレス変換をNAPT(Network Address Port Translation)と呼びます。

>>第10回:データは宛先にきちんと届いているか?【ベストエフォート型・ICMP・到達不能メッセージ・アドレス解決・pingコマンド・ARP・ポート番号・ウェルノウンポート番号・登録済みポート・ダイナミック/プライベートポート】

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