第8回:宛先は1つ?それとも複数?【ユニキャスト(ユニキャストIPアドレス)・ブロードキャスト(ブロードキャストIPアドレス)・マルチキャスト(マルチキャストIPアドレス)・プレフィックス表記・ネットワークアドレス】

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この記事のポイント

  • ユニキャストはただ1つの宛先にデータを転送すること
  • ブロードキャストは同じネットワーク上のすべてのホストにデータを転送すること
  • マルチキャストは特定のグループに含まれるホストにデータを転送すること

宛先は1つ?それとも複数?

ユニキャスト、ブロードキャスト、マルチキャスト

IPでデータを転送するとき、宛先は1つでも、複数でも大丈夫です。データを転送することは、宛先がただ1つなのか、それとも複数なのかによって3つに分類できます。

ユニキャスト

ただ1つの宛先にデータを転送することをユニキャストと呼んでいます。そして、ユニキャストで利用するIPアドレスがユニキャストIPアドレスです。PCなどにはユニキャストIPアドレスを設定します。ユニキャストのデータの転送を行うためには、宛先のホストのユニキャストIPアドレスをIPヘッダの宛先IPアドレスとして指定します。

ユニキャスト

ユニキャスト

もし、まったく同じデータを複数の宛先に転送したいときには、送信元で宛先の数分だけユニキャストのデータ転送を繰り返せばよいのですが、効率がよくありません。まったく同じデータを複数の宛先に効率よく転送するためにブロードキャストとマルチキャストを使います。

ブロードキャスト

同じネットワーク上のすべてのホストにまったく同じデータを転送することをブロードキャストといいます。IPヘッダの宛先IPアドレスにブロードキャストIPアドレスを指定すると、同じネットワーク上のすべてのホストにデータを転送することができます。

ブロードキャスト

ブロードキャスト

マルチキャスト

同じアプリケーションが動作しているなど特定のグループに含まれるホストにまったく同じデータを転送することをマルチキャストといいます。IPヘッダの宛先IPアドレスにマルチキャストIPアドレスを指定します。

マルチキャスト

マルチキャスト

IPアドレスの構成は大きく分けて2つ


次の項目のポイント

  • ユニキャストIPアドレスは前半のネットワーク部と後半のホスト部から構成される
  • 255.255.255.255はブロードキャストIPアドレスである
  • 224.0.0.0~239.255.255.255はマルチキャストIPアドレスである

ユニキャストIPアドレス

ユニキャストIPアドレスの構成

PCやサーバなどTCP/IPの通信を行うホストに設定するIPアドレスは、ユニキャストIPアドレスです。TCP/IPの通信の大部分はユニキャストです。そのため、ユニキャストIPアドレスをしっかりと理解することが重要です。

IPアドレスは、ネットワーク部ホスト部という2つの部分から構成されています(※4)。社内ネットワークインターネットなどは、複数のネットワークがルータまたはレイヤ3スイッチで相互接続されています。IPアドレスの前半のネットワーク部でネットワークを識別します。そして、後半のホスト部でネットワーク内のホスト(のインタフェース)を識別します。

ユニキャストIPアドレスの構成

ユニキャストIPアドレスの構成

(※4)「ネットワーク部」は「ネットワークアドレス」、「ホスト部」は「ホストアドレス」と表現されることもよくあります。

ブロードキャストIPアドレス

データを同じネットワーク上のすべてのホストに一括して転送するときに利用するブロードキャストIPアドレスは、32ビットすべて「1」であるIPアドレスです。ドットつき10進数表記では「255.255.255.255」がブロードキャストIPアドレスです。(※5)

(※5)ユニキャストIPアドレスの後半のホスト部のすべてのビットが「1」となっているIPアドレスもブロードキャストIPアドレスです。

マルチキャストIPアドレス

マルチキャストIPアドレスとして、「224.0.0.0~239.255.255.255」に範囲が決められています。この範囲のうち、あらかじめ決められているマルチキャストIPアドレスがあります。例えば、「224.0.0.2」というマルチキャストIPアドレスは「同じネットワーク上のすべてのルータ」というグループです。また、ユーザが自由にグループを決めるために239で倍まる範囲を利用できます。

ブロードキャストIPアドレスとマルチキャストIPアドレス
種類 範囲
ブロードキャストIPアドレス 255.255.255.255
マルチキャストIPアドレス 224.0.0.0~239.255.255.255

IPアドレスの範囲の区切りは?


次の項目のポイント

  • サブネットマスクでIPアドレスのネットワーク部とホスト部の区切りをあらわす
  • サブネットマスクは32ビットでビット「1」がネットワーク部、ビット「0」がホスト部をあらわす
  • サブネットマスクの表記は、IPアドレスと同じく8ビットずつ10進数に変換して「.」で区切る
  • サブネットマスクの表記には、「/」のあとに連続したビット「1」の数で表記するプレフィックス表記もある

サブネットマスク

サブネットマスクとは

前項で見たようにIPアドレスは前半のネットワーク部と後半のホスト部から構成されています。ネットワーク部とホスト部の区切りは一定ではなく可変です。32ビットのIPアドレスのどこまでがネットワーク部であるかを明示するのがサブネットマスクです。サブネットマスクはIPアドレスと同じく32ビットで「0」と「1」が32個並びます。「1」はネットワーク部をあらわし、「0」はホスト部をあらわします。サブネットマスクは、必ず連続した「1」と連続した「0」です。「1」と「0」が交互にあらわれるようなサブネットマスクはありません。

ビットの並びではわかりづらいのでIPアドレスと同じようにサブネットマスクも8ビットずつ10進数に変換して「.」で区切って表記します。サブネットマスクのとりうる10進数の数値は、下の表にまとめているいずれかです。

サブネットマスクのとりうる値

10進数 2進数
255 1111 1111
254 1111 1110
252 1111 1100
248 1111 1000
10進数 2進数
224 1110 0000
192 1100 0000
128 1000 0000
0 0000 0000

また、/のあとに連続した「1」の数で表記する場合もあります。この表記はプレフィックス表記と呼びます。

原則として、192.168.1.1 255.255.255.0または192.168.1.1/24のように、IPアドレスにはサブネットマスクも併記して、ネットワーク部とホスト部の区切りを明確にするようにします。

サブネットマスクの例

サブネットマスクの例

ネットワークアドレスとブロードキャストアドレス

IPアドレスの後半のホスト部をすべてビット「0」とすると、ネットワークそのものを識別するために利用するネットワークアドレスになります。ネットワーク構成図などでネットワークを識別するときにネットワークアドレスを利用します。

なお、ホスト部をすべてビット「1」にすると、ブロードキャストアドレスです。255.255.255.255以外に、この形式のブロードキャストアドレスを利用することもできます。

ネットワークアドレスとブロードキャストアドレス

ネットワークアドレスとブロードキャストアドレス

>>第9回:ネットワークに接続するには2段階ある【物理的な接続・論理的な接続・グローバルアドレス・プライベートアドレス・パブリックアドレス・DHCP・NAT・NAPT】

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