<<第7回:データの呼び方にはいろいろある【HTTPメッセージ・TCPセグメント・IPパケット・ルーティング・IPアドレス・ドットつき10進数表記】
この記事のポイント
- ユニキャストはただ1つの宛先にデータを転送すること
- ブロードキャストは同じネットワーク上のすべてのホストにデータを転送すること
- マルチキャストは特定のグループに含まれるホストにデータを転送すること
宛先は1つ?それとも複数?
ユニキャスト、ブロードキャスト、マルチキャスト
IPでデータを転送するとき、宛先は1つでも、複数でも大丈夫です。データを転送することは、宛先がただ1つなのか、それとも複数なのかによって3つに分類できます。
ユニキャスト
ただ1つの宛先にデータを転送することをユニキャストと呼んでいます。そして、ユニキャストで利用するIPアドレスがユニキャストIPアドレスです。PCなどにはユニキャストIPアドレスを設定します。ユニキャストのデータの転送を行うためには、宛先のホストのユニキャストIPアドレスをIPヘッダの宛先IPアドレスとして指定します。
もし、まったく同じデータを複数の宛先に転送したいときには、送信元で宛先の数分だけユニキャストのデータ転送を繰り返せばよいのですが、効率がよくありません。まったく同じデータを複数の宛先に効率よく転送するためにブロードキャストとマルチキャストを使います。
ブロードキャスト
同じネットワーク上のすべてのホストにまったく同じデータを転送することをブロードキャストといいます。IPヘッダの宛先IPアドレスにブロードキャストIPアドレスを指定すると、同じネットワーク上のすべてのホストにデータを転送することができます。
マルチキャスト
同じアプリケーションが動作しているなど特定のグループに含まれるホストにまったく同じデータを転送することをマルチキャストといいます。IPヘッダの宛先IPアドレスにマルチキャストIPアドレスを指定します。
IPアドレスの構成は大きく分けて2つ
次の項目のポイント
- ユニキャストIPアドレスは前半のネットワーク部と後半のホスト部から構成される
- 255.255.255.255はブロードキャストIPアドレスである
- 224.0.0.0~239.255.255.255はマルチキャストIPアドレスである
ユニキャストIPアドレス
ユニキャストIPアドレスの構成
PCやサーバなどTCP/IPの通信を行うホストに設定するIPアドレスは、ユニキャストIPアドレスです。TCP/IPの通信の大部分はユニキャストです。そのため、ユニキャストIPアドレスをしっかりと理解することが重要です。
IPアドレスは、ネットワーク部とホスト部という2つの部分から構成されています(※4)。社内ネットワークやインターネットなどは、複数のネットワークがルータまたはレイヤ3スイッチで相互接続されています。IPアドレスの前半のネットワーク部でネットワークを識別します。そして、後半のホスト部でネットワーク内のホスト(のインタフェース)を識別します。
(※4)「ネットワーク部」は「ネットワークアドレス」、「ホスト部」は「ホストアドレス」と表現されることもよくあります。
ブロードキャストIPアドレス
データを同じネットワーク上のすべてのホストに一括して転送するときに利用するブロードキャストIPアドレスは、32ビットすべて「1」であるIPアドレスです。ドットつき10進数表記では「255.255.255.255」がブロードキャストIPアドレスです。(※5)
(※5)ユニキャストIPアドレスの後半のホスト部のすべてのビットが「1」となっているIPアドレスもブロードキャストIPアドレスです。
マルチキャストIPアドレス
マルチキャストIPアドレスとして、「224.0.0.0~239.255.255.255」に範囲が決められています。この範囲のうち、あらかじめ決められているマルチキャストIPアドレスがあります。例えば、「224.0.0.2」というマルチキャストIPアドレスは「同じネットワーク上のすべてのルータ」というグループです。また、ユーザが自由にグループを決めるために239で倍まる範囲を利用できます。
ブロードキャストIPアドレスとマルチキャストIPアドレス
種類 | 範囲 |
---|---|
ブロードキャストIPアドレス | 255.255.255.255 |
マルチキャストIPアドレス | 224.0.0.0~239.255.255.255 |
IPアドレスの範囲の区切りは?
次の項目のポイント
- サブネットマスクでIPアドレスのネットワーク部とホスト部の区切りをあらわす
- サブネットマスクは32ビットでビット「1」がネットワーク部、ビット「0」がホスト部をあらわす
- サブネットマスクの表記は、IPアドレスと同じく8ビットずつ10進数に変換して「.」で区切る
- サブネットマスクの表記には、「/」のあとに連続したビット「1」の数で表記するプレフィックス表記もある
サブネットマスク
サブネットマスクとは
前項で見たようにIPアドレスは前半のネットワーク部と後半のホスト部から構成されています。ネットワーク部とホスト部の区切りは一定ではなく可変です。32ビットのIPアドレスのどこまでがネットワーク部であるかを明示するのがサブネットマスクです。サブネットマスクはIPアドレスと同じく32ビットで「0」と「1」が32個並びます。「1」はネットワーク部をあらわし、「0」はホスト部をあらわします。サブネットマスクは、必ず連続した「1」と連続した「0」です。「1」と「0」が交互にあらわれるようなサブネットマスクはありません。
ビットの並びではわかりづらいのでIPアドレスと同じようにサブネットマスクも8ビットずつ10進数に変換して「.」で区切って表記します。サブネットマスクのとりうる10進数の数値は、下の表にまとめているいずれかです。
サブネットマスクのとりうる値
10進数 | 2進数 |
---|---|
255 | 1111 1111 |
254 | 1111 1110 |
252 | 1111 1100 |
248 | 1111 1000 |
10進数 | 2進数 |
---|---|
224 | 1110 0000 |
192 | 1100 0000 |
128 | 1000 0000 |
0 | 0000 0000 |
また、/のあとに連続した「1」の数で表記する場合もあります。この表記はプレフィックス表記と呼びます。
原則として、192.168.1.1 255.255.255.0または192.168.1.1/24のように、IPアドレスにはサブネットマスクも併記して、ネットワーク部とホスト部の区切りを明確にするようにします。
ネットワークアドレスとブロードキャストアドレス
IPアドレスの後半のホスト部をすべてビット「0」とすると、ネットワークそのものを識別するために利用するネットワークアドレスになります。ネットワーク構成図などでネットワークを識別するときにネットワークアドレスを利用します。
なお、ホスト部をすべてビット「1」にすると、ブロードキャストアドレスです。255.255.255.255以外に、この形式のブロードキャストアドレスを利用することもできます。
>>第9回:ネットワークに接続するには2段階ある【物理的な接続・論理的な接続・グローバルアドレス・プライベートアドレス・パブリックアドレス・DHCP・NAT・NAPT】