<<第20回:レイヤ2スイッチの動作【MACアドレステーブル・Unknownユニキャストフレーム・フラッディング】
この記事のポイント
- 通信は双方向である
- 戻りのイーサネットフレームは、もともとのフレームの宛先と送信元MACアドレスを入れ替えたアドレスになる
レイヤ2スイッチの動作 その4
イーサネットフレーム受信後のMACアドレステーブルへの登録
返事も同じように転送する
ホストAからホストDヘイーサネットフレームを送信したら、ホストDからホストAへ返事を返します。今度は、ホストDからホストAへのイーサネットフレームの転送を考えます。
ホストDからホストA宛てのイーサネットフレームを送信すると、SW2のポート2で受信します(下の図の①)。
これまで解説した動作と同じように、まず、送信元MACアドレスをMACアドレステーブルに登録します。SW2のMACアドレステーブルに新たにMACアドレスDが登録されるようになります。SW2はポート2の先にMACアドレスDが接続されていると認識します(下の図の②)。
そして、宛先MACアドレスAとMACアドレステーブルを照合します。MACアドレステーブルから MACアドレスAはポート3の先に接続されていることがわかるので、ポート3ヘイーサネットフレームを転送します(下の図の③)。
ホストDからホストAへのイーサネットフレームの転送 SW1の動作
SW1がホストDからホストAへのイーサネットフレームを受信すると、やはり動作は同じです。まず、送信元MACアドレスをMACアドレステーブルに登録します。SW1は、MACアドレスDはポート3の先に接続されていると認識することになります。(下の図の①)
そして、宛先MACアドレスAはMACアドレステーブルからポート1の先に接続されていると認識しているので、ポート1へ転送します。(下の図の②)
ホストAは、SW1から転送されたイーサネットフレームを受信して上位プロトコルの処理を行います。
MACアドレステーブルの管理
次の項目のポイント
- MACアドレステーブルの1つのポートに対して複数のMACアドレスが登録されることもある
- MACアドレステープルに登録されているMACアドレスの情報には制限時間がある
MACアドレステーブルとは
1つのポートに1つのMACアドレスとは限らない
勘違いしやすいのですが、1つのポートに対して1つのMACアドレスだけが登録されるとは限らないことに注意してください。スイッチのMACアドレステーブルに登録されるのは、そのスイッチ自体に接続されている機器のMACアドレスだけではありません。複数台のスイッチを接続しているときには、1つのポートに対して複数のMACアドレスが登録されるようになります。
例えば、前項までで考えているネットワーク構成で、SW1 とSW2はポート3同士で接続しています。SW1のMACアドレステーブルのポート3には、SW2配下のMACアドレスが登録されます。SW2のMACアドレステーブルも同様です。
制限時間がある
MACアドレステーブルに登録されるMACアドレスの情報は、接続するポートが変わったりすることもあるので、永続的なものではありません。MACアドレステーブルに登録するMACアドレスの情報には制限時間がもうけられています。制限時間の値は、スイッチの製品によって異なりますが、おおむね5分程度です。登録されたMACアドレスが送信元となっているデータ(イーサネットフレーム)を受信すると、制限時間がリセットされます。ユーザが特に何も操作しなくてもPCは何らかのデータを送信しています。そのため、PCが起動している限りは、MACアドレステーブルにPCのMACアドレスが登録されていることがほとんどです。
また、有線(イーサネット)を利用してデータを転送するときには、レイヤ2スイッチのMACアドレステーブルの完成を待つ必要はありません。MACアドレステーブルが出来上がっていないと、余計なデータの転送を行ってしまいますが、データそのものはきちんと届きます。
データを送信しながら同時に受信
次の項目のポイント
- 送信と受信を同時に行うことを全二重通信と呼ぶ
- 初期のイーサネットは送信と受信を切り替えながら行う半二重通信
- 現在のイーサネットでは全二重通信ができる
全二重通信とは
データの送信も受信もいっぺんに
レイヤ2スイッチをベースにつくり上げたイーサネットのネットワークでは、データの送信も受信も同時に行うことができます。データの送信と受信を同時に行うことを全二重通信と呼びます。全二重通信に対して、半二重通信があります。半二重通信は送信と受信を同時にはできず、切り替えながら行います。伝送媒体を共有しているバス型トポロジである初期のイーサネットは半二重通信です。初期のイーサネットは、ある瞬間には1台しかデータを送信できず、残りは受信のみしかできません。
現在のイーサネットでの全二重通信の仕組み
全二重通信を実現するための一番シンプルな仕組みは、データの受信用と送信用で伝送媒体を分けて使うことです。現在のレイヤ2スイッチを利用したイーサネットでは、データの受信用と送信用を分けることで全二重通信ができるようにしています。(※5)
レイヤ2スイッチとPCのイーサネットのインタフェース(ポート)間をUTPケーブルで接続します。UTP ケーブルの見た目は1本ですが、実質的には4本です。UTPケーブルは8本の銅線がよりあわされていますが、2本1組として、合計4組の電気信号を流せるようにしているからです。
イーサネットの規格のうち、UTPケーブルを利用する10Mbpsおよび100Mbpsの10BASE-T、100BASE-TXは4組のUTP ケーブルの配線のうち1組を送信用、1組を受信用の電気信号を流すようにしています。つまり送信用と受信用を分けて使えるようにしています。通信を行うと、送信で100Mbps、受信で100MbpS のデータのやリとりが可能です。
※1Gbpsのイーサネット規格では全二重通信の仕組みは違います。