第22回:ケーブルなしで手軽にネットワークをつくる【無線LANアクセスポイント(無線LAN親機)・無線LANインタフェース(無線LAN子機)・無線LANクライアント・インフラストラクチャモード・アソシエーション・SSID (Service Set Identifier)・制御信号(ビーコン)・周波数(チャネル)】

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この記事のポイント

  • 無線LANでは、ケーブル配線なしに手軽にネットワークをつくれる
  • 無線LANアクセスポイントと無線LANクライアントで無線LANのネットワークを構成する
  • 無線LANアクセスポイントは有線のイーサネットにも接続する

ケーブルなしで手軽にネットワークをつくる

無線LAN

ケーブル配線はわずらわしいもの

イーサネットは有線のネットワークです。初期のイーサネットで利用していた同軸ケーブルに比べると、現在一般的に利用しているUTPケーブルはずいぶんと扱いやすくなりました。しかし、ケーブル配線はわずらわしいものです。ケーブルなしで手軽にネットワークをつくるために、無線LANが開発されるようになっています。

無線LANの概要

無線LANとは、ケーブルが不要で手軽にLANを構築することができるLAN技術です。2000年ごろから低価格な製品が提供されるようになり無線LANの普及が進んできました。

無線LANのネットワークをつくるためには、無線LANアクセスポイント(無線LAN親機)無線LANインタフェース(無線LAN子機)が必要です。

無線LANインタフェースはノートPCやスマートフォン/タブレットにあらかじめ備わっていることがほとんどです。デスクトップPCには、もともと無線LANインタフェースが備わっていなくても、あとから追加できます。無線LANインタフェースで無線LANにつなげている機器を指して、無線LANクライアントともよく表現します。

無線LANのデータのやりとりは、無線LANアクセスポイント経由で行います。無線LANアクセスポイント経由でやりとりすることをインフラストラクチャモード(※6)と呼びます。

無線LANクライアントのアプリケーションからリクエストを送る宛先のサーバはほとんど有線のイーサネットを利用しています。つまり、無線LANだけでは通信が完結しないことが普通なので、無線LANアクセスポイントはレイヤ2スイッチと接続して、有線のイーサネットネットワークにもつなげています。

無線LANの概要

無線LANの概要

(※6)無線LANインタフェース間で直接データをやりとりするアドホックモードもあります。

無線LANにも規格がたくさん


次の項目のポイント

  • 無線LANは主に利用する電波の周波数帯とデータを電波に載せる方式によっていくつもの規格がある
  • Wi-Fiはもともと無線LAN機器の相互接続を保証していることを示すために使われているが、現在では、無線LANのことを指す用語となっている

IEEE802.11b/a/g/n/ac

有線のイーサネットには、利用する伝送媒体や速度によってたくさんの規格があります。無線LANも同様にいくつも規格があります。2018年現在でよく利用されている無線LANの規格を表にまとめています。

主な無線LAN規格

主な無線LAN規格

無線LANの規格の大きな違いは、利用する電波の周波数帯です。大きく2.4GHz帯と5GHz帯の周波数を利用する規格に分かれています。そして、「0」と「1」のデータを変換してどのように電波に載せるかによって、伝送速度が変わってきます。比較的新しい規格であるIEEE802.11n/acはより高度な仕組みを利用していて、高速な通信ができるようになっています。ただし、製品ごとに対応できる最大の伝送速度が異なってきます。

IEEE802.11n/acの無線LANアクセスポイントや無線LANインタフェースを購入するときには、対応している最大の伝送速度を確認しておかなければいけません。

Wi-Fiとは

無線LANの規格のIEEE802.11よりも「Wi-Fi(ワイファイ)」という言葉を目にする耳にすることが多いでしょう。以前は、無線LANの機器同士の相性が合わずに、メーカーが異なるとうまく接続できないこともありました。そこで、Wi-Fi Allianceという業界団体が無線LAN機器の相互接続性を認定したブランドをWi-Fiと呼んでいます。Wi-Fiのロゴがつけられている製品は、たとえメーカが異なっていても安心して使えるということをユーザに知らせるためです。

Wi-Fi

Wi-Fi

なお、現在では相互接続できることを保証するという意味よりも、無線LANのことを指して「Wi-Fi」と表現することが多くなっています。

無線LANにつなげる


次の項目のポイント

  • 無線LANで通信するには、無線LANアクセスポイントにアソシエーションする
  • SSIDを指定してアソシエーションをする

アソシエーションとは

無線LANで通信するには?

闇雲に電波を飛ばして無線LANで通信できるわけではありません。まずは、無線LANアクセスポイントにつなげて、無線LANのリンクを確立しなければいけません。無線LANにつなげることを、アソシエーションと呼びます。アソシエーションは、有線のイーサネットのケーブル配線に相当します。

SSIDを指定してつなげる

アソシエーションには、SSID (Service Set Identifier)が必要です。SSIDとは、無線LANの論理的なグループを識別する識別情報です。あらかじめ無線LANアクセスポイントには、最大32文字の文字列でSSIDを設定しておきます。1台のアクセスポイントに複数のSSIDを設定することもできます。また、複数のアクセスポイントに対して同じSSID を設定することもできます。SSIDはESSID(Extended Service Set Identifier)と呼ぶこともあります。

無線LANクライアントは、アクセスポイントが出している制御信号(ビーコン)から利用可能な電波の周波数(チャネル)を探します。利用可能なチャネルがわかれば、SSIDを指定して無線LANアクセスポイントにアソシエーション要求を出します。無線LANアクセスポイントはアソシエーション応答で接続の可否を通知します。

アソシエーション

アソシエーション

なお、暗号化や認証などのセキュリティに関する設定はSSIDごとに行います。SSIDを複数設定しておいて、SSIDごとにそれぞれセキュリティの設定を行うことで、無線LANクライアントの通信を制御することもできます。

>>第23回:電波は使い回している【実効速度・スループット・チャネル・衝突(コリジョン)・CSMA/CA・WPA2】

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