第28回:VLANを使うメリット【VLAN・タグVLAN・IEEE802.1Q・VLAN間ルーティング】

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この記事のポイント

  • VLANによってレイヤ2スイッチを仮想的に分割できる
  • VLANで分割されたレイヤ2スイッチ同士はつながっていないので、VLANが異なると通信できない

VLANを使うメリット

VLAN利用のメリット

VLANはレイヤ2スイッチを分割する

VLANについてわかりやすく考えると、レイヤ2スイッチを仮想的に分割するということです。前項の例では、VLAN10とVLAN20の2つのVLANを考えています。すると、1台のレイヤ2スイッチは仮想的に2台のスイッチとして扱うことができます。分割したVLANごとのスイッチになるポートは設定次第で自由に決められます。

VLANでレイヤ2スイッチを分割

VLANでレイヤ2スイッチを分割

また、VLANごとのスイッチ間は接続されていないので、ネットワークを分割してVLAN間のデータを分離しています。VLANのメリットとして、セキュリティの向上が挙げられることもあります。これは、データが転送される範囲を制限できるという意味です。

VLANはネットワークを分割するだけ

ルータでもネットワークを分割していることになります。ただ、ルータで分割されたネットワークはルータで相互接続されています。

一方、VLANの場合はネットワークを「分割するだけ」であることに注意してください。

VLANで分割したネットワーク間の通信を行うためには、ルータやレイヤ3スイッチが必要です。ルータまたはレイヤ3スイッチによって、VLANで分割したネットワークを相互接続します。VLAN同士を相互接続して、VLAN間の通信ができるようにすることをVLAN間ルーティングと呼びます。VLAN間ルーティングについては、後であらためて解説します。

複数の接続線を1本にすっきりまとめる


次の項目のポイント

  • 複数のスイッチをまたがったVLANを構成するときにスイッチ間の接続をタグVLANポート1つにまとめられる
  • タグVLANポートで扱うイーサネットフレームにはVLANタグが付加される

タグVLAN、IEEE802.1Q

複数のスイッチでVLANをつくる

VLANは1台だけでなく、複数のスイッチをまたがってつくることもできます。ただ、VLANの動作の仕組みから複数のスイッチをまたがってVLANをつくるときには、スイッチ間の接続がVLANごとに必要になってしまいます。VLANが2つあれば、スイッチ間を2本で接続しなければいけません。スイッチ間を効率よく接続するためにタグVLANのポートがあります。

タグVLAN

タグVLANのポートによって、複数のレイヤ2スイッチをまたがってVLANを構成するときに、レイヤ2スイッチ間の接続を1本だけにすることができます。

タグVLANのポートとは、複数のVLANに割り当てられていて、複数のVLANのイーサネットフレームを転送できるポートです。

下の図でいえば、タグVLANのポートは、VLAN10のポートでもあり、VLAN20のポートでもあります。

スイッチ間の接続

スイッチ間の接続

そして、タグVLANのポートで送受信するイーサネットフレームには、VLANタグが付加されます。VLANタグによって、スイッチ間で転送されるイーサネットフレームがもともとどのVLANのものであるかがわかるようにしています。レイヤ2スイッチは、VLANタグでVLANを識別し、VLANの基本的なしくみである同-VLANのポート間のみでイーサネットフレームを転送します。

VLANタグはIEEE802.1Qで規定されています。タグVLANポートで扱うイーサネットフレームは、下の図のようにヘッダ部分にVLANタグが追加されてVLANを識別できるようにしています。

IEEE802.1Qタグ

IEEE802.1Qタグ

機器の追加や配線の変更をせずに、ネットワークを変える


次の項目のポイント

  • タグVLANポートは1つのポートをVLANごとに分割して使えるようにする
  • VLANの設定次第で、ネットワークをどのように分割するかを自由に決められる

VLANとタグVLAN

ポートは1つでも

タグVLANのポートをわかりやすく考えると、「割り当てているVLANごとに分割できるポート」です。レイヤ2スイッチで2つのVLANをつくっていれば、タグVLANのポートはその2つのVLANのポートとして分割して使えるようになります。

VLANはスイッチを分割、タグVLANはポートを分割

VLANとタグVLANについてまとめましょう。

  • VLAN : レイヤ2スイッチを仮想的に分割する
  • タグVLAN : ポートをVLANごとに仮想的に分割する

下の図ではVLAN10とVLAN20を設定している2台のレイヤ2スイッチをタグVLANポートであるポート8で接続しています。このネットワーク構成は、ポート8で接続している2台のレイヤ2スイッチが2組あるように扱うことができます。そして、この2組のレイヤ2スイッチ同士の接続は、完全に分離されています。VLANはネットワークを分割するための技術なのです。

VLANとタグVLAN

VLANとタグVLAN

設定で自由に決められる

レイヤ2スイッチで作成するVLANは設定で自由に決められます。また、どのポートをどのVLANに割り当てるかやタグVLANのポートなども設定で自由に決められます。VLANとそれに関連するポートの設定次第で、機器の追加や配線の変更などせずに、ネットワークをいくつにするかを自由に決められます。つまり、VLANを利用すると、ネットワーク構成を柔軟に決められるというメリットがあります。

>>第29回:分割したネットワーク同士をつなぐ方法【VLAN間ルーティング・仮想インタフェース(VLANインタフェース)・デフォルトゲートウェイ・認証・パスワード認証・モノによる認証・バイオメトリクス認証】

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